山の緑から生まれる糸



  
天蚕はヤママユの淡い緑色の繭からとった糸で、艶のある優美な光沢と強伸力に優れ、しなやかでしわになりにくい特性から「繊維のダイヤモンド」ともいわれて珍重されています。その天蚕を織り込んだ紬は有明紬と呼ばれるのだそうです。安曇野天蚕センターでは天蚕の歴史や生態をビデオ上映と古くから受け継がれてきた器具や資料により、わかりやすく紹介しています。また、有明紬の商品もや糸も販売しています。ヤママユ(山繭・学名 Antheraea yamamai)はチョウ目・ヤママユガ科に分類されるガの一種で、ヤママユガ(山繭蛾)、テンサン(天蚕)とも呼ばれます。日本在来の代表的な野蚕で、北海道から九州にかけて分布し、全国の雑木林に生息しているそうです。幼虫はブナ科のクヌギ、コナラ、クリ、カシなどの葉を食べます。天蚕で検索すると、「野生の蚕」という表現もよく目にするのですが、カイコとは科も異なります。どうも「野蚕(やさん)」という表現が誤解を生むようなので、調べてみましたら、「野蚕(やさん)」とは、家畜化された蚕(家蚕;かさん)の対義語で、絹糸を生成する野生の昆虫の総称とのことでした。日本には3種くらいが知られているそうです。

センターでは、つやつやの淡いグリーンの糸も売っていました。タティングレースにするとさぞや優美なものができそうと思ったのですが。さすがは繊維のダイヤモンド、1g1000円でした。10g前後がパックされたものしかなかったのであきらめたのですが、5gくらいを量り売りしてもらえないか聞けば良かったと後悔しました。手元の資料でちょっと計算したところ、繭3-4個で1gの生糸になるようですが、もう少し必要かも知れません。天蚕を使った製品は、栞やコースター、ブローチに加工した物がありましたが、デザインが今ひとつ。糸巻きの形のストラップは可愛かったのですが、糸巻きの部分がプラスチックでこれも今ひとつ。シンプルなストールや有明紬のはぎれは素晴らしかったですがお値段も素晴らしいと。。。。結局、ぷっくりとかわいいがま口を、おみやげに購入しました。



糸車です。向きが実際に紡ぐ向きとは逆になっていますが、尖った紡錘の先が見学者の方に向かないようにしているためと思われます。実際に紬糸を紡ぐのに使われているそうです。

   
センターの案内の女性は、とても親切で、なにより天蚕を愛してられるというのが感じられました。私が糸車に夢中になっている間に、虫に興味津々な夫と話が弾み、なんと、繭をいただいてしまいました。この繭は卵を取るために成虫を羽化させた残りだそうです。より良い糸を取るために選別してあるので、繭もとても良い物だそうです。穴は成虫が出てきたところです。左側の茶色っぽい繭は、美ヶ原温泉で私達が見つけたもの。去年の夏羽化して、繭だけが冬をこしていたと思われます。


     
一時廃れかけ戦後、再興された有明紬ですが、悩みは後継者とのこと。「天蚕」のみを生業にすることは不可能だそうで、また、クヌギ畑も減ってきているそうです。カイコには羊羹様の配合飼料も開発されているそうですが、ヤママユは生の葉しか食べないそうです。クヌギの畑、切り詰めて枝をたくさん出させるのだそうです。


5月は、まだ養蚕の作業は始まっておらず、紡ぎも織りも区切りがついたという感じで、訪問する時期としてはよくなかったのですが、とても濃い時間を過ごせました。夏に行けば、飼育している様子も見せて頂けるそうです。
安曇野市天蚕センター(染、織・資料館)
〒399-8301 長野県安曇野市穂高有明3618-4

センターの正面にはなぜか牛が放牧されていました。みんな子牛♪ピンクのお鼻がかわいいですね。
     

参考にしたサイト1 絵で糸作りまでの説明があります。

参考にしたサイト2 写真で、飼育の様子がわかります。昔ながらの竹かごが素敵です。が、虫の苦手な方は注意。


追記
ここで、生糸、精練済天蚕糸、商品が購入できます。センターでもらったパンフにはHPのアドレスといいながらメールアドレスしか書いていなかったのです。うーむ、しかもHPの仕様や、購入手続きはお役所仕事ですね〜。もう少しなんとかならないのかしら?