今回は一泊入院

 そんな訳で、再アブレーションを受けることになりました。原因のわからない特発性なので「何か心に大きな負担がありますか?」と先生にも随分心配されてしまいました。町内会の役員とか、あるといえば、あったかもしれません。それはともかく、手術は入院当日午後で、念のため3泊とってありますが、経過が良ければ翌日午前の退院です。体への負担は、医学の進歩で年々軽くなっているようです。

 アブレーションまでの一ヶ月は、つとめて忘れて過ごしていたような、終われば心配がなくなると待ちかねてすごしたような感じでした。編みかけのストールを完成させて持ってゆこうと小さな目標を立て、溜まったポイントで買ったロクシタンのスキンケアセットで自分をリラックスさせてすごしました。

 手術が近づいた2/15日にたまたま翻訳者の村井理子さんのエッセイを見つけました。同性で年齢も近く、そしてこのタイミングで見つけた彼女に勝手に親近感を覚えています。

村井さんちの生活(23)突然の入院騒ぎ

 入院当日は、金曜日、寒いけれどよく晴れていました。受付で手術の同意書等渡し、二年ぶりにエレベーターで病棟に昇ると、朝日がまぶしいくらいに差し込む廊下に片付けられるのを待っている朝食のカート。ナースステーションも慌ただしい感じでした。廊下に出てきた看護師さんに声をかけると、体重。身長を廊下で測り、病室に案内されて、担当看護師の紹介や今日の流れをざっと聞き、着替えて横になったところで、主治医の先生が来て下さり「がんばりましょう。」と励まして下さり「今回は眠くなる薬を使います。担当医は自分とあもう一人○○先生です。」と要点を説明下さいました。その後、心電図を取り付けられ、手術中のルートを確保するためさっそく点滴の準備。ただ、針が中々入らず、看護師さんが交代することに。呼ばれて来られた看護師さんは前回の入院のときの担当の方でした。お互い「あっ」という顔をして世間話をしながら、針をきっちりいれてくださいました。昼食は抜きなのですが、術中に薬剤が入るまではソルデムというブドウ糖-電解質液を点滴されます。そのあとは時間までひたすら待ちの時間となりました。前回と違って私はガラケーではなくスマホ、病院はwifiが完備されていました。ただ、点滴の刺さったところが攣って気になり、落ち着かない感じで過ごしました。

 お昼過ぎに病室に夫が来てくれて、すぐに移動となりました。お昼ご飯のあとののんびりした時間だったせいか廊下で談笑しているおじいちゃん達の視線を浴びながら、廊下でストレッチャーに自分で乗りかえました。看護師さんに押してもらって、エレベーターで一階に降り、外来は終わっている時間でしたが売店には人もいて、また視線をあびながら、カテーテル室に移動。扉の前で夫に手を振って、私の方は室内に、夫は廊下の一角に設けられた待合室に移動し、あとから聞いたところでは先生から説明をうけたようです。

 検査室内には前回と同じく大きなモニターが片側にあり、ガラス越しの部屋ではたくさんのスーツを着た人が動き回っていました。ストレッチャーから、カラフルな電気コードがたくさん渡っている上を自分で術台に平行移動。幅が意外に狭いのと、高さもあるので、ちょっと怖かったです。そのあとはいろんなところに電極を付けられたり、体の上に布をかけられたりと同時進行で進んで行き、先生も挨拶されながら室内に入ってこられました。
 眠くなる薬の点滴が入り、続いて、足の付け根に消毒液をダバダバかけられ、これがコードブルーという医療ドラマの場面そのものだったので、あとで看護師さんに聞いたら「まるまる一本使いますからね」とのこと。部分麻酔を打ちます〜、チクッとしますと矢継ぎ早に処置が進んで行きます。麻酔の針が骨にあたってかなり痛かったのと、カテーテルを入れる際のぐいぐいと容赦ない感じが伝わってきました。眠くなる薬も効いてきたようで、ウトウトはするのだけれど、話しかけられれば即座に現実に戻ってちゃんと受け答えはできるのです。会話が無くなるとウトウトするのですが周りの人の気配は感じているので白昼夢を見ている感じでした。
 カテーテルが入ると、造影やら、マッピングという変異している場所を確定する作業があって、先生やスタッフの方達がモニターを見ながらキビキビと動いている雰囲気が伝わってきます。他にも私の胸の近くに近づいた看護師さんが放射線の範囲に近づきすぎないよう注意を受けていたり耳から言葉の情報が入ると起きているときと同じくらいの意識レベルに戻るので、居眠りの気持ちのよさではなく、眠くなるけど眠らない、眠れない辛さがありました。

 マッピングが終わると、いよいよアブレーションで、前回と同じくグーと熱く押される感じがあります。今回は小刻みに何カ所かしているという感じでした。この頃から、口の中がやたらと乾いてきて、唾液が全く出てこなくなりました。口の中と舌が乾いてざらざらする感じです。アブレーションが終わると、心拍数を薬剤で調節しながら確認しているようでした。120, 140,160, 180と読み上げる数字と同調してドキドキが増えていていって、心拍数って薬で調節出来るんだと変なところに感心しました。
 カテーテルが抜かれると、体についていた電極も外されてゆきます、と同時に先生が枕元に来られて、細かい説明をして下さいました。頭がぼんやりしていたので必死に聞き取ります。「右心室の働きが弱いのかもしれません。プルンキエ繊維という場所に関連する不整脈かもしれません。女性、しかも右心室に生じるのはとても珍しい症例かもしれません。」左心室は筋肉が厚いので流れる電気の量も多く、不具合もおきやすいそうなのですが、仮に右心室のプルンキエ繊維という場所に関連して異常があるとすればとても珍しい症例で、世界的に見てもですよと言われました。私としては、処置が終わってぐったりしていたのと口が乾いて話しづらかったので「今話す?」という感じだったのですが、話の内容は必覚えておいてあとで調べなきゃと必死で思っていました。
 先生は普通ならそのまま退室されるのでしょうが、術台からストレッチャーへの移動される際も、看護師さんたちに加わって手伝って下さり、改めていい先生だと思いました。

 部屋を出ると夫が待っていてくれて、一緒に部屋に戻りました。緊張からくる疲れと、少し頭痛と吐き気もして、眠れない眠気もなかなか抜けずしんどかったです。夕食もお腹はすいていたものの気分的に完食はできませんでした。ただ、夜もよく眠れましたし翌朝の体調もごく普通でした。朝食も完食。後日の診察で、こうした体への負担の軽さは鎮静剤の効果もあると先生からお聞きしました。
 今回は前回と異なり静脈からカテーテルを入れたようで、内出血も殆どなく、術後の安静時間も短かくてすみました。
 翌日は土曜だったので、主治医の先生はお休みでしたが、担当医の方から術後の経過は良好である事、発熱もないので、退院の許可をいただき予定通り一泊で退院できました。今回は「限度額適用認定証」を余裕をもって用意できていたので、会計時には、適用された金額を支払い、退院時のみ病院の薬局で処方されるお薬を受け取って、病院を後にしました。
 夫に迎えにきてもらっていたので、途中ちょっと早めのお昼をコメダ珈琲で、モーニングの時間はぎりぎり終わっていたので、シロノワールをいただきました。

2018年5月13日記