カサンドラの城

カサンドラの城

カサンドラの城

Dodie Smith の『カサンドラの城』。イギリスの古いお城に暮らす17才のカサンドラ。お城といっても、カーテンは色あせ、りっぱな調度品ももうありません。実は食べるのにも困っている生活。姉のローズはもうそんな生活にうんざり、でも、カサンドラはお城の生活と「書くこと」を楽しんでいます。そんな二人の前にお城の大家の相続人であるアメリカ人青年の兄弟が現れます。


「私たちに、わくわくするようなことが起きると思います?」
「さあ、どうかしら、おちびちゃん?でもお姉さんの方はチャンスがあれば花開くんじゃない?」


作中、姉妹は、オースティンとブロンテ姉妹の作品を読んでいて、ローズはジェイン・オースティンが好きで、カサンドラシャーロット・ブロンテがお気に入り。カサンドラの城はビクトリア時代の女性作家たちへのオマージュでもあるようです。私も「ジェーン・エア」(1847年)は高校生の時に読んで、自分で道を切り開くヒロインの波瀾万丈な物語に夢中になりました。「自負と偏見」は、去年読んだのですが、こんなに古い本(1813年)で、しかも「初対面の印象は最悪だったけれど、実はお互い心引かれていた。男性の方はすんごいお金持ち」というロマンス小説の王道ストーリーなのに、人間観察がするどくてぐいぐい読ませます。本の中の主人公が本を読んでいる、しかも、自分もその本を読んでいると、とてもうれしくなります。最近では、「大鴉の啼く冬」で、キャサリンサラ・ウォーターズの「半身」を読んでいましたこちら


この本を翻訳した石田英子さんの2冊目が去年同じ出版社から出版されるようだったのですが、まだ、本にはなっていにようです。こちら19世紀末、小さな農村で生まれ育ったフローラ・トンプソンという女性が、ローラという主人公に仮託して少女時代を回想した自伝的なフィクションです。 "Lark Rise to Candleford" by Flora Thompson