シェトランド・四重奏

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)


本格的な編み物シーズンに向けて、冬を感じたくて、「週末糸へん日記」のhisaさん紹介の、アン・クリーブスの「大鴉の啼く冬」を読みました。ロンドンから北へ遥か960km。北の海に浮かぶシェトランド島。誰もが顔見知りという濃密な人間関係の小さな町で起きた殺人事件。ミステリーなので、内容はこのくらいにしますが、なかなかに凍てつく物語でした。主要登場人物のシェトランド署のジミー・ペレスは、生っ粋のフェア島生れなのですが、名前からもわかるようにスペイン系の顔だち。このあたりの理由についての蘊蓄はフェアアイル・ニットの起源とも相まってへーっと思いました。今後、春夏秋の季節に合わせてシェトランド・カルテットとして続きが出るそうです。

フェアアイル・ニットも少し出てきますが、地元での扱いの一面が覗けて興味深かったです。南で一番の編み手である母親は、手のこんだフェアアイルの模様を編むのは好きではなく「あんな模様、なんの役にたつんだい?それで、もっと暖かくなるとでも?」と毒づき、島の教師はなんとなくノルディック模様っぽい機械編みのカーディガンを着ている。手の込んだフェアアイル模様や手紡ぎのセーターを着ているのは、自分にあった生活を見つけるためにシェトランド島にやってきたよそもの。島のニットデザイナーはロンドンでは相手にされず、ニューヨークと東京で高く評価される。

伝統的な手仕事は、多かれ少なかれこういう扱いを受けているように思うので、ちょっと考えちゃいました。