ブリュッセルの工房で

貴婦人と一角獣

貴婦人と一角獣

トレイシーシュヴァリエの「貴婦人と一角獣」を読みました。


パリの国立中世美術館(クリュニー美術館)にある、「貴婦人と一角獣」のタピスリーにかかわる物語です。1490年から92年にかけてのパリとブリュッセルを舞台に、タピスリーを完成させるまでの間に、注文主である貴族の家族、従者、画商、絵師、タピスリーの工房の家族、徒弟が織りなす人間模様。

工房の羊毛の匂いや織糸の手触り、庭の花々の色、修道院の庭で少女が刺繍するたどたどしい手つきまで実際に感じられるような文章にひきこまれつつ、残りのページを気にしながら、ゆっくり読みました。

登場人物はみな甘んじて引き受けなければならない人生をかかえつつも、自分の意志で選択できる自由も持ち。それだけに苦悩も大きく(絵師のニコラだけは悩んで無かったりして^^;)、幸せとか不幸とか一言で片付けられないのが人生なのね。