ずっと昔の空の下で

    
上橋菜穂子著「精霊の守り人」の新潮文庫版の後書きに、佐藤さとるの「誰も知らない小さな国」、いぬいとみこの「木かげの家の小人たち」、ル=グウィンの「ゲド戦記」ローズマリ・サトクリフの一連の歴史物語に、強い影響を受けたと書いてありました。どれも小学校の図書館でおなじみの本ばかりだったのですが、サトクリフの本は見た記憶がありません。どちかというと魔法や妖精が出てくる話が好きだったので記憶に残っていないのでしょうか?


おそらく上橋さんの影響もあるのかもしれませんが、「第九軍団のワシ」をはじめ一連の物語が岩波少年文庫からごく最近出版されています。紀元120年頃ローマが最盛期を迎えた時代のお話なのですが、今ひとつ時代背景がピンとこないので、年表で確認。この物語の頃、日本はまだ弥生時代でした。邪馬台国が出てくるのもまだ100年以上後のことです。


歴史小説は好きなのですが、特に外国のお話を読む時は、いったいいつ頃の話?この人は誰?と思うことも多いので、年表で確認することにしています。この年表を買ったのは、佐藤賢一の「王妃の離婚」を読んだときです。表紙に金文字でラテン語の一文があります。sic et non。意味は然りと否。1498年フランス。時の王ルイ12世は王妃ジャンヌにたいして離婚裁判を起こします。裁判のときはフランス語ではなくラテン語を話さなくてはなりません。王の離婚ではなく王妃の離婚であるところがミソ。


「第九軍団のワシ」は、このラテン語が日常語だったころのお話です。年表ではたった1行記されているかいないかの事柄の奥に、物語を生み出す作家の方々の想像力に乾杯です。