家なき鳥

最近、読書の神様も降りてきていて、乱読ぎみです。お盆前から、サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」、「暗号解読」、オースティンの「自負と偏見」、そして、今日紹介するグロリア・ウィ−ランの「家なき鳥」などを読んでいます。


家なき鳥 (白水uブックス)

家なき鳥 (白水uブックス)


このお話は児童向けなのですが、インドの貧しい少女が、13才で嫁がされ、すぐ未亡人になり、数年後には夫の母親に「未亡人の街」に置去りに去れてしまうという、なんとも救いのなさそうな設定なのですが、そこで思いがけないことが起ります。
少女はお嫁入り道具にするキルトに母親から教わった刺繍をします。「不安な気持ちをぜんぶ、ひと針、ひと針、ぬいこんだ。おわかれしなきゃいけないものをみんな、いっしょにもってゆけるように、刺繍の図柄にした」。未亡人の街についたとき少女が持っていたのは、このキルトと、僅かなお金、一冊の詩集と、自分の心から飛び立つものを刺繍にうつせる技術だけでした。
このお話は、昔の話ではなくて現在インドの社会を写したものなのです。結婚するには持参金をもってゆかなければならず、未亡人は白いサリーを着なければならず、夫と死別しても実家にもどることなどありえないという慣習が存在します。それでも、少女らしい華やかさへのあこがれと明るさ、文字を覚え自分の権利を守ろうとする強さや実行力を持つ少女が魅力的です。インドの同じような境遇の方からすれば、ひとにぎりの幸運なのかもしれないけれど。生活感がなく心の内面の深い部分のみに潜り込もうとしがちな(←たぶん)、日本の少女に読んでほしいと勝手に思っています。


つぎは、「貴婦人と一角獣」と、「週末糸へん日記」のhisaさんお勧めの「大鴉の啼く冬」を読むつもりです。