ひと月の夏

ひと月の夏 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

ひと月の夏 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

こういうタイトルに弱いんです。


「わたしのどこかが時による腐食を越えて生き延びられるとするなら、それはこの作品にしてくれ。これこそ、わたしという人間を表わしているのだから」という画家の声を拾い上げた彼の仕事は、古い教会の壁画の修復。額に三日月の傷を持つ落下していく男の絵はなぜ塗りつぶされていたのか?


ものを作るのではなく、ものを修復する仕事。そして、彼自身の人生の修復。


「ぼくにとって、この日はいつまでも夏の日の中の夏の日として心にのこるだろう−−雲一つない空、草に覆われた掘り割りや道端。ひなげし、天南星(てんなんしょう)の花、鬱蒼たる木々、イバラが生け垣一面にさいている果樹園」


イギリスの田園を舞台にしたお話なので、さりげなく「ヘリンボーンツイードのコート」とか「羊」が出てきます。「紡ぎ」もキリスト教にからんで少し。1989年に映画にもなっているようでこちらも評判がよいようです。教会の様式などは、なかなか具体的に思い浮かべられないので、映画も見てみたいです。