めずらしく現代小説の純文学です。
- 作者: イアンマキューアン,Ian McEwan,小山太一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/02/28
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ミステリーの要素があるので詳細は避けますが、始まりはオースティンの作品世界のような裕福なお屋敷での日常。けれど、小説家を夢見て姉と同じケンブリッジに進みたかったブライオニーが18才になった時、彼女は第二次世界大戦下、凄惨な状態の傷病兵の看護に明け暮れていました。下巻の最初から200ページあたりまではかなり心臓に悪い描写が出てきますが、上巻の夏の昼下がりのようなけだるい雰囲気との対比で、夏の美しい日に13才の少女ブライオニーが目撃した出来事が発端となり人生が狂ってしまった人々を、さらに翻弄する時代の不幸を際立たせています。そして、物語は、長じて作家になったブライオニーの1999年の回想で締めくくられます。
作家と作品中の作家がともに、読者を幻惑させ、翻弄する、素晴らしく手強い小説でした。
読みながら思い出したのがモンゴメリの「アンの娘リラ」です。手作りを趣味にしていると「アンみたいね」と言われることがあるのですが、アン・シリーズの最終巻のこの作品でアンの家族は第一次世界大戦に翻弄されるのです。ブライオニーとほぼ同じ年代を戦時下に過ごしたリラ、最愛の兄二人と淡い恋心を抱いている男性は出征しています。二人の少女の姿が、ネガとポジのように反転して見えたり、作家と作家が生み出したキャラクターという点で重なったりもして。ルーシー・モンゴメリが、彼女が生み出した作品とは異なり、悩みの多い結婚生活を過ごしていた事は知られてきていますが、モンゴメリ自身は作品を虚構と思っていたのか、追い求めた果てにたどり着いた真実だったのか。。。
実はこれの下書きを書いている間に温泉卵を作っていたのですが、ハッと気づいたら15分オーバー。ゆで卵になっていました。塩豚とキャベツのパスタに載せて、とろ〜と頂きたかったのですが。日常生活はハードボイルドになってしまいました。