ともしびをかかげて

ともしびをかかげて〈上〉 (岩波少年文庫)

ともしびをかかげて〈上〉 (岩波少年文庫)

ローズマリー・サトクリフのローマンブリテン4部作の3作目「ともしびをかかげて」を読了しました。感想は一言では言えないのですが、「第九軍団のワシ」とともにこれから何度も読み返す本になりそうです。前作2作はほとんど女性が出てこないのですが、この作品にはフラビアとネスという少女が出てきます。彼女たちが引き受けなければならない人生は、主人公のアクイラ以上に、残酷なのですが、それでも二人は生きていく中で枯れることなく小さな花を咲かせ、その姿が心を打ちます。


あとがきの著者のことばと上橋菜穂子さんの解説もとても読み応えがあります。上橋さんは「多くの日本の若者はこの本を手に取らないだろう」とあっさり述べられていますが、「少年文庫」なのにそれはないんじゃない?と思いつつ否定はできないです。ただ、私はこの本に10代で出会えなかったのを、ちょっとくやしく思っています。


ところで、マンネンロウという植物がところどころに出てきて、読み終わったあと、調べたらローズマリーでした。これも先に知っておきたかったと後悔。また、著者のことばの中では思いがけない人物の名前が出てきます。あーこの時代は古代から中世にうつりかわる境目なんだと思うとともに、サトクリフの「落日の剣」という作品も読みたくなりました。サトクリフは多作な作家で邦訳も結構出ているようなので(文庫はあまりないみたいなのですが)、これからゆっくり読んでいこうと思います。