ゆっくり読むのがおすすめ

リヴァトン館

リヴァトン館

老人介護施設で暮らす98歳のグレイス。ある日、彼女のもとを新進気鋭の映画監督が訪れる。1924年に「リヴァトン館」で起きた悲劇的な事件を映画化するにあたり、ただひとりの生き証人であるグレイスにインタビューしたいと言う。封じ込めていた「リヴァトン館」でのメイドとしての日々がグレイスのなかで鮮やかに甦る。ふたりの美しいお嬢様、苦悩する詩人、厳格な執事、贅を尽くした晩餐会―そして、墓まで持っていこうと決めたあの悲劇の真相も。死を目前にした老女が語り始めた真実とは…。滅びゆく貴族社会の秩序と、迫りくる戦争の気配。時代の流れに翻弄された人々の愛とジレンマを描いた美しいゴシック風サスペンス。(本書あらすじより)

国や背景が共通するカズオ・イシグロ日の名残り」や、 イアンマキューアン「贖罪」とつい比べちゃうのですが、実際作者も後書きで「日の名残り」を挙げてらっしゃいます。きっと「贖罪」も読んでいるはず。この二作よりは若干、甘めな味付けになっています。ここ伏線だろうな〜というところはけっこうわかっちゃううし。。。。ちょっとできすぎな顛末もあったり、ロマンティックな余韻にも浸れます。

過去を振り返る物語なので、読者も、悲劇がやがて訪れることはわかっているのです。でも、違った未来があったのかもしれない。そんな、グレイスの逡巡を追体験するように、ゆっくり読むのがおすすめです。