『The Little Strager』(原題)

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)

サラ・ウォーターズを読むのは「半身」以来2作目です。「荊[いばら]の城」と「夜霧」は気が乗らず読んでません。で、「エアーズ家の没落」ですが、怖くて謎がちっとも解けなくて、そして、やはり誰も幸せになりません。

かつて隆盛を極めながらも、第二次世界大戦終了後まもない今日では、広壮なハンドレッズ領主館に閉じこもって暮らすエアーズ家の人々。かねてから彼らと屋敷に憧憬を抱いていたファラデー医師は、往診をきっかけに知遇を得、次第に親交を深めていく。その一方、続発する小さな“異変”が、館を不穏な空気で満たしていき…。

崩れかけたお屋敷が生き物のように、そこに住む人をも押しつぶしてゆくかのような異変の数々。心霊現象?だれかのたくらみ?
「これで、全部の辻褄が合ったと思ったんだもの!」

「私は医者だ。目の前にあるものしか信じない」

謎は最後まできっちりとは解き明かされません。それを最後に手に入れたのは「あなた」なの?

日の名残り」や「贖罪」と重なる時代をあつかったイギリスの暗い一面を背景に持つ作品です。暗いけれど惹き込まれるお話でした。

メイドを呼ぶワイヤーで各部屋と繋がれた呼び鈴や、使用人と家族の使う廊下が分けられているところなど、なかなか想像しにくいのですが、

に詳しく出てきます。