日の名残り

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

カズオ・イシグロの「日の名残り」を読みました。初イシグロです。旧家の執事が、お屋敷の新しいアメリカ人のご主人の計らいで、お屋敷を退職した女中頭を訪ねる旅に出ます。美しい景色の中をドライブしながら、執事は、「偉大な執事とは何か」を考察しながら、第二次世界大戦前夜の時代を回想します。執事は結局執事の視点を超えることはできず、物語は静かで、せつなくて、残酷です。けれど、人生の日はまだ暮れてはいない。


現在と過去、国を動かしていた(してしまった)人と、その人たちの傍らで時代の動きを見とどけようとした(見ていただけの)人、主人の人生と自分の人生、ジョークとユーモアなど、層になった小説の構造がうまいなあと感じました。


他の作品も読んでみようと思います。