さようなら


家ではたまちゃんと呼ばれていた、たまおさんことたまおは8月1日夜11時10分すぎ永眠しました。今は、ベランダから見える私のお気に入りの楠の下に、大好きだったカボチャの種いっぱいと干しぶどう2粒と一緒に眠っています。たまちゃんを形づくっていた分子はもうたまちゃんに戻ることはないけれど、そのうち、葉っぱや鳥や、雲となって私のまわりに来てくれることでしょう。

不調発覚

  • 7/29日曜日
    • かごの外に出ていつものように遊び、カボチャの種も食べたのですが、半分残していました。
    • この種の残りは翌日には食べていました
  • 7/30月曜日
    • ずっと眠っている。
    • このときは最近かごから出て遊んだ翌日はとにかく眠るのでさほど気にしませんでした。また、ここ数日涼しく過ごしやすかったので、眠りが深いのかと不覚にも逆に安心してしまっていました。
  • 7/31火曜日
    • 夜、あまりにおきてこないのでカボチャの種で釣るのだけれど、ぷいっと無視。
    • 目やにが片眼に出ているのに気づく。
    • おしりはきれい。
  • 8/1水曜
    • 朝5時頃、昨夜からまったくエサを食べていない。
    • 朝6時、ジャガイモをあげるが顔もあげない。
    • 寝返りをうつときに身体の自由がきかない感じで、よろよろする。
    • 目やにがひどくなっている。
    • おしりはきれい。


エアコンをつけぱなしにして養生させるか、病院につれてゆくか悩みましたが、結局、出勤前にクリニックにつれてゆきました。ドクター(ちなみに女性)が見てくださって、小動物の不調の確実な要因はわからないと前置きした上で、目やにがでるのは全身症状が悪い証拠です。腫瘍はないようですし、たまおちゃんの様子と年齢を考えると老化の影響と思われます。急変のように思われますがこの子たちにとって1日は一月にも相当するし、よほど悪くならない限りは弱ったところを見せないのですよ。とのことでした。


今回ショックだったのは、寿命のことです。
私はゴールデンハムスターの寿命は3年くらい(ただ3歳の誕生日を迎えるのは多くない)とおもっていました。前ハムのさらちゃんは2歳3ヶ月生きたので、ケガも病気もしなければ2歳のお誕生日はまずまちがいなく迎えられると思っていたのです。けれど実際には、ゴールデンハムスターの寿命は約2(〜3)年。生後1年から老化が始まりまり、1年10ヶ月〜2年位が平均的な寿命なのだそうです。もちろん、それ以上生きる場合もあります。ハムスターは文字通りわたしたちのそばを駆け抜けていってしまうのですね。ドクターにも確認したのですが「たまおちゃんの1歳11ヶ月は、おっ、頑張ってるな、と正直思いますよ」とのことでした。たまおの変化は急すぎるとおもっていたのですが、老化の小さなきざしはたしかにありました。小さなハゲが6月頃から頭を中心にできては直りを繰り返していましたし、かごの外に出たがらなくなっていました、夜中にがりがりとかごをかじることもめっきり少なくなっていました。


インフォームド・コンセント
実際には診察を進めつつのお話だったのですが、大事なことなので書いておこうとおもいます。私自身は小動物に医療行為を施すことにあまり積極的ではありません。慣れない場所で、知らない人に触れられるのは、弱っている動物にとってそれだけで命に関わる大きなストレスになると思っているからです。けれど、数年前にはなかった小動物専門のお医者さまが開業されているのも事実。今回つれていったクリニックもウサギとハムスターを(じっさいには「も」ですが)診療対象動物としてきちんとあげています。ドクターの診断は老衰でした。なので、苦しくないようにすごせるよう抗生物質(バイキンの感染を併発しないよう)と、乳酸菌の入った栄養補助剤で、残りの時間をすごさせてあげましょうとのことでした。症状がかなり改善するかもしれないし、逆にストレスで文字通り急変する危険もありますが、点滴治療もありますが、どうされますか?ときかれましたが、これは断りました。薬ももうのませないという選択もあったと思います、けれど、暑い時期ですし感染症をもし合併したらかわいそうなことになると投薬は決心しました。この選択は今でもまちがっていなかったと思います。ただ経過を、夫にメールをする気には、なぜかなれませんでした。夫は、メールがこなかったので悪くもよくもなっていないんだと思ったと、あとで言ってくれました。


急変
職場の隅にカゴを置かせてもらい、薬と栄養補助剤を飲ませました。「おいしくできていますよ」との言葉通り、目薬みたいな容器から難なく飲んでくれました。蜂蜜と乳酸菌入りなのでたまちゃんもおいしかったと思います。口元が汚れたので水も少し飲ませました。そのあとはまるりんといつものハムスターポーズでうずくまって、じっとしていました。昼をすこしすぎた頃、かごをのぞくと、なんだか様子が変です。あごの下が腫れている?とっさに薬のせいかもと思いました。クリニックの午後の診察は4時からです。幸い、締め切り仕事は3時過ぎに終わりました。職場に断って早退し、4時過ぎにふたたびクリニックへ。たまおはなんだかぐったりして身体もつめたく、手足も紫色になっています。事情を話し、ドクターにみていただくと、厳しい顔で「薬のアレルギーかもしれません。炎症をやわらげる注射をしましょう。」。このとき飼い主として投薬したことをものすごく後悔しました。それでも、注射を断ることはできませんでした。ぐったりとしたまま、首筋に注射される姿をみていると、涙が出てきました。ごめんねたまお。ドクターからは「ご心配をかけて申し訳ありません」と声をかけていただきました。不信感はありません。小動物の治療の難しさにたいするドクターのくやしさも感じたからです。家にもどるまでには息は無いだろうと思っていました。なので、ぼんやりと電車に揺られて帰りました。途中、カゴに被せた布を取ることはできませんでした。


おわかれ
家にもどり、おそるおそる布をとるとたまおの手足がピンク色にもどっていました。結局あごの腫れは最後までひかなかったのですが、静かにまるくうずくまっていました。そして、夫も帰宅し、もうそのころにはたまおは丸くなることもできなくて横になってしまっていたのですが、たまちゃんのかごのあるリビングでいつものようにご飯を食べ、テレビを見て、お茶を飲みました。夜11時すぎにかごをのぞくと静かに息をしなくなっていました。ふわふわの毛並みはほとんど生前と変わることなく、顔も眠っているようでした。


今回の投薬の選択は、もしかするとたまおの命を縮めてしまったのかもしれません。けれど、クリニックにつれてゆかなければ、私はなにか重大な病気を見落としたのかもと悩んで、こんなに穏やかな気持ちでたまおを送れなかったと思います。また、たまおももっと長く苦しんだかもしれません。ペットにはできるだけゆっくり年をとってほしい、けれど、私達より寿命が短いからこそ飼えるんですよね。肝心のたまおの気持ちを聞けないのがつらいのですが、ペットを飼うということは、いかになっとくできる最期を見送るかなのだと思いました。いってしまったペットは虹の橋のたもとで飼い主をまっているという素敵なお話もありますが、ハムスターは忘れっぽいのできっと待っていないと思います。トトトと振り向きもせず虹の橋を渡ってしまう、ハムスターらしくていいなと私は思っています。