IKAT

昨日はクメール伝統織物研究所こちらの方のカンボジアの布についての講演を聴きにいってきました。


       
場所は、六本松のこんなすてきな和菓子屋さんのギャラリー「木香庵」さん。九州大学の六本松キャンパスの東隣にあります。大学はちょうど学園祭でものすごくにぎやかだったのですが、道を一本入るととても静かな住宅街でした。クメール伝統織物研究所の代表の森本喜久男さんは京都の友禅職人として工房もかまえられていたそうなのですが、学生時代から関わっていたベトナム反戦運動をきっかけに20年前にカンボジアに移住されたそうです。人を惹き付けるオーラを放っている方でした。


「私たちが目指しているのは、単なるおみやげの布ではなく、価値を持った美しい布です」。
  


私が買ったのは、幅40cm長さ170cmのIKATのスカーフ。IKATとは「括る」という意味で、布にあしらわれた絣模様を指します。布には織り手の名と、デザインした方の名のタグがつけられています。手でひいた絹糸、手染め、手織りです。染め材はラックカイガラムシの巣(赤)、ライチ(グレイ)、prohut(プロフー、えっとたぶんフクギの仲間:黄、緑)。総模様のものは価格的に手が出ませんでした。布が折り重なったときに作る陰影が美しいです。布目を拡大すると綾織りなのがわかります。
  


織り手の方は、かつて織りや染の経験のある人だけでなく、働かなければならない女性たち。染織は伝統的に女性が担ってきたということと、子供をそばにおいて働けるということから、工房で働きたい女性は引きも切らずだそうです。夫は行方不明というか出稼ぎに行ったまま音信不通という女性が多いようでした。工房で仕事を得て、生活が安定すると、戻ってきた夫もいるとか。そういう男性も研究所の大工仕事や農園の仕事を得て家族ぐるみ生活できるようになってきたそうです。こう書くと理想の楽園のようですが、内戦の中でしたたかでなければ生きてゆけなかった人たちです、研究所を出てゆかざるを得ないトラブルもあったりしたそうです。そういう意味では私の買った布は、生きるために、生活するために織られた布です。